小倉かまぼこは、今年で創業95年を迎える旦過市場の老舗中の老舗であり、旦過市場のメーンといっても過言ではない。森尾さんはそんな小倉かまぼこの四代目店主として日々おいしいかまぼこ料理を作り続けている。

 

小倉かまぼこの看板メニューといえば、魚のすり身に玉ねぎ・人参・胡椒を混ぜ込みその周りを薄いパン生地で巻いてサクッと揚げた「カナッペ」だ。私は小倉で生活しているため旦過市場を訪れる機会が多々あるが、必ずと言っていいほど来ると買ってしまう絶品である。実はこのカナッペ、4年前に「秘密のケンミンショー」で特集されており、以来爆発的な人気を誇っているそうだ。森尾さんに放送の反響について尋ねると、『毎日夕方頃には完売してしまう。多い日には1日で2500食売れる日もある』と答えてくださった。しかし、『局所的な発展は市場全体でみると縮小していくことに繋がる』とも教えてくださった。

 

旦過市場は「北九州の台所」と呼ばれており、たくさんの店舗が市場にはひしめきあっている。そんな旦過市場、「小倉かまぼこから」はどのように見えているのだろうか。現代の買い物というと通販や大型商業施設という人が大半だと思う。私もよく利用している。しかし、旦過市場での買い物には、通販にはない人と人とが向かい合う温かみのある光景があふれている。北九州市立大学の学生が運営するコミュニティースペースの「大學堂」も連日にぎわいを見せている。『人と人の繋がりこそが、旦過市場という場所であり魅力なのではないだろうか』と答えてくださった。

 

95年という歴史を築き、日々美味しい商品を作り続けている小倉かまぼこ。そんな小倉かまぼこを今後どうしていきたいかを尋ねると「何か新しいことにチャレンジしてみたい。北九州の名物として、地元に根差した会社として、旦過市場により多くの人にどうやったら来てもらえるかを様々な面で考えていきたい」と答えてくださった。

 

小倉で生まれ育った森尾さんにとって、小倉とはどのような場所かを最後にお聞きすると「コンパクトで住みやすいまち。なによりも人情味にあふれている。誰かが何かをしようとすれば、周りの人たちが自然と手伝ってくれる。これほど地域で連携のとりやすい場所はないんじゃないか」と笑顔で答えてくださった。

 

今回の取材を通して、地元民として一層小倉への愛が深まったと感じた。これから出会う地域の方々との出会いを大切にしていきたい。