魚町銀天街にあるワシントンビルは、かねやす百貨店の新館として1936(昭和11)年に竣工しました。当時の小倉市街で随一の高層階を誇る建造物でした。
戦時中の1942(昭和17)年に米軍による都市空襲に備えて、この建物の屋上に防空監視哨という防空陣地が設置されました。
北九州を標的とした都市空襲が発生した場合、警戒警報発令とともに、この防空監視哨に監視員が配置され敵機の動向を西部防衛隊司令部などの日本軍当局に報告していました。
かねやす百貨店は、1954(昭和29)年に閉店しましたが、その新館と防空監視哨は戦後72年を経た現在でも無言の語り部として郷土の隠れた歴史を伝えるかのように佇んでいます。
※写真は1939(昭和14)年当時のかねやす百貨店新館

現在の「みかげ通り」
現在は1階に「ドラッグ11」が入居する「ワシントンビル(旧かねやす百貨店」の建物は、周辺の大きな建物に囲まれていますが、堅牢なコンクリート造りで、今でも独特の存在感を放っています。


郷土史家・菊池満(きくちみつる)
1980(昭和55)年生まれ、北九州市小倉北区出身。福岡県地方史研究連絡協議会監事、朝日カルチャーセンター北九州教室講師、西日本工業大学非常勤講師などを歴任。
現在、西日本歴史文化研究所所長、北九州市立年長者研修大学校周望学舎・穴生講師、産業考古学会会員。専門は、日本近世・近現代史。
【主な発表論文】西日本文化協会創立50周年記念論文「森鴎外と和気清麻呂伝説」
【主な著書】「森鴎外 少年時代の業績」(共著)、「北九州市郷土史跡ガイドブック」(共著)など。